「ぼうはええ子じゃ」
「やればできるっちゅうことは、わしが一番よくわかっちょる」
かけてもらう言葉で、どんな人でも変わることができる。
あらすじ
親に見捨てられた果てに、通り魔となって老人や女性を襲い、強盗を重ねて逃避行中の伊豆見（林遣都）。宮崎県の山深い村に足を踏み入れた彼は、けがをしたスマ（市原悦子）を助けたのが縁で彼女の家に居候することになる。金を奪って逃げようと考えていた伊豆見だが、スマや伊豆見を彼女の孫だと思い込む村人たちと接するうちに、心の変化が生まれる。ある日、10年ぶりに村へ帰ってきた美知（藤井美菜）と出会ったのを機に自分の犯してきた罪の大きさを感じた彼は……。
引用：シネマトゥデイ
山奥の村人たちと出会う前
- 通り魔で女性をナイフで刺してしまっても罪悪感を感じない、冷徹な人間。
- 人を脅しながら逃走を続けていた。
- 若い頃に親に捨てられ、帰る家族というものがない。
１．通り魔で女性をナイフで刺してしまっても罪悪感を感じない、冷徹な人間。
主人公は、通り魔を常習的に行っており、予想外に抵抗してきた女性を脅すつもりで持っていたナイフで刺してしまいます。女性はかなりの深傷を負うのですが、女性がその後どうなったのかを気にかける感情はありませんでした。
２．人を脅しながら逃走を続けていた。
犯罪をおかしながら逃げる。逃げ続けた先で椎葉村という宮崎の山奥で老婆の命を助けることになってからは、老婆の家に居候することになります。
３．若い頃に親に捨てられ、帰る家、家族がない。
「親父は、借金作って若い女と逃げて、おふくろはスナックの客とできて、弟を連れて家を出て行ったんだ、どっちもろくなもんじゃない。きっと、あいつらの親だって、そのまた親だって、ずっとろくなもんじゃないんだ」
山奥の村人たちと出会ってから
１．通り魔で女性をナイフで刺してしまっても罪悪感を感じない、冷徹な人間。
逃亡中の山奥で怪我をしている老婆を助け、そのまま老婆の家に居候することになるのですが、宮崎の山奥のすばらしい風景、温かいお風呂、とてもおいしい食事で、すさんでいた心に変化が現れてきます。
一緒に生活している老婆からは「坊はええ子じゃ」とほめられ、
山仕事を手伝わされた近所の爺さんには、働きぶりを「やればできるっちゅうは、わしが一番よくわかっちょる」と人に認められることを初めて体験することになります。
祭りが近く、村人たちとふれあっているうちに、
「でもさあ、みんな親切だよな。ここの人たちは」と主人公が言うのですが、
「それは、あなたが親切にしてあげてるからでしょ」と人格の変化が現れています。
都会から戻ってきた若い女性と親しくなるのですが、戻ってきた理由が強盗にあい、生活につらくなって、都会の生活を整理したと言う話を聞き、以前とは違う、人間的な感情を持ち合わせた主人公は、自分の犯した罪の意識に強い反省の気持ちが湧いてきます。
２．人を脅しながら逃走を続けていた。
山仕事を一緒にしていた爺さんに、主人公の人格を見ぬかれます。
「今のお前に大切なのは、逃げんくせをつけることだ。今から逃げていたら、残りの人生どうなることじゃ」
村人たちとの交流の中で、人間的な感情が育まれ、都会から戻ってきた女性と親しくなるうちに、自分の犯した罪から逃げてはいけないと思い、自首することを決心します。
３．若い頃に親に捨てられ、帰る家、家族がない。
自首することにした主人公は、一緒に生活している老婆に、罪を償うのに何年、何十年かかるかわからないけれども、長生きしてほしい。ここに帰ってきてもいいかなと、お願いします。
老婆は「そんなに長くはまてんけんど、待っちょる、待っちょる」と温かくこたえます。
そして、三年後、罪を償った主人公は、明かりのついた老婆の家に帰ってきました。
みどころ
主人公の荒んだ心を、宮崎県椎葉村の素晴らしい景色が癒してくれます。
その素晴らしい景色と共に流れる音楽が秀逸で、とても完成度の高い映像作品になっております。
主人公の林遣都、老婆役の市原悦子、爺さん役の綿引勝彦など、みんなはまり役でした。
とくに林遣都の、荒んだ頃の顔と田舎暮らし後の顔が大きく変わっているのには、演技力の高さが観られます。NHK朝ドラ「スカーレット」の役では、まるで別人のようですね。
キャスト・スタッフ
監督：東伸児
原作：乃南アサ
キャスト：林遣都・市原悦子・綿引勝彦・藤井美菜・相島一之
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