半年前、俺はなにも知らない大学生だった。なにも知らないほど強いものはなかった。
あらすじ
堕落した大学生活を送ってきた時枝修(中村蒼)は、生活費を工面してくれた父親が借金を抱えて行方をくらまし、授業料未納によって大学を除籍される。家賃も払えずアパートを追い出された彼は、ネットカフェで宿泊しながら日払いのアルバイトで過ごしていた。さらにはホストクラブで働くはめになり、ついにはホームレスになってしまう。
引用:シネマトゥデイ
住所がないということ
大学生→ネット難民
主人公は、何不自由なく大学生活を送っていましたが、ある日突然、親からの学費・家賃・仕送りがなくなり、大学は除籍、住んでいた家は追い出され、所持金3万円のみという生活を強いられてしまいます。
とりあえず、ネットカフェで寝泊りしながら職を探しますが、住所がないため、ティッシュ配りなどの日雇いの仕事しかありません。
採用する企業側としても、住所不定の人物に対しては、使用者としての責任を負えないため採用することができない。
ティッシュ配りの仕事で親しくなった人から、
「24時間営業の飲食店で、150円のハンバーガーで一夜を過ごす人もいるよ、寝泊りできるところがあるだけ、まだましだよ」
という現実も聞かされます。
また、治験という奇跡的なバイトで20万円の大金を手にするのですが、警察の職務質問に会い、大金所持と治験による腕の内出血、住所がないということから、疑われ連行されてしまいます。
「住所不定無職」というワードは、悪いイメージが強くなってしまうのです。
究極の格差社会
ネット難民→ホストクラブ
警察から解放され、街を彷徨っていると、若い女性に飲みに誘われます。
何軒か連れ回され、ホストクラブに連れていかれ、そこで主人公は泥酔してしまい、気づいた時には、女性はもういませんでした。
高額な支払いを請求され、有り金すべて巻き上げられてしまいましたが、ここで働かせて欲しいと懇願し、オーナーに認められ、ホストとしてやっていくことになりました。
しかし、下っ端はひたすら酒を一気飲みさせられ、体はぼろぼろ。指名が入らなければ自分の給料はあがりません。一緒に住んでいる下っ端仲間は、
「この世界じゃ、売れてるやつは一握り。どこも格差社会だよ」
と、切ない笑みをこぼしながら愚痴ります。
ホストの1日売り上げ最高水準は6,000万円だそうです。逆に「飛ばれた」と言われる、ツケのお客さんに逃げられた場合は、売り上げはマイナス、一瞬で多額の負債を抱え込むことになります。
(上位1%は月収1,000万以上、全体の70%が月収20万円以下のほとんど喰えないレベル)
主人公にも、看護師の常連さんがつくようになりました。その常連さんとはプライベートでも合うようになり、関係が深くなっていきます。その女性はだんだん派手になり、お店でのお金の使い方も豪勢になっていきました。主人公が困っていた高額な借金も助けてあげます。
主人公の面倒を見ていた先輩もお客さんに「飛ばれて」100万円の負債を払えず、主人公と一緒に田舎に逃亡することを決断しました。
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抜け出すのは困難
ホストクラブ→底辺労働者
先輩の知り合いのつてを頼って、田舎の作業現場で働くことになるのですが、そこに先輩の知り合いはいませんでした。
「紹介料ひとり2万ずつもらって、逃げたんじゃないの」
裏切られた二人でしたが、住むところ、食事はなんとか確保できました。
そこで長くはたらく年配の先輩は、「貧困ビジネス」について教えてくれます。
作業現場は、だれにでもできる仕事で給料がとても安い、宿と食事を提供しているが、給料から天引きしているため、飲食業を兼ねているようなものだと。
雨が降ると仕事もなくなるため、安定した収入が見込めず、貯金ができない。
スキルも身につかないから、転職することもできない。
それでも二人は、汗を流して働いて、あたたかいお風呂に入り、まずくとも空腹のため美味しく感じられる食事に、ささやかな幸せを感じていました。
そんな中、主人公は、東京に置いてきたホスト時代の常連さんのことが頭から離れず、お金を借りたままになっていること、何も言わず、姿を消してしまったことを謝りに会いにいきます。
女性は、ホスト通いの支払いが滞っており、借金を抱えていました。ホストクラブに借金を帳消ししてもらえるか相談しにいき、主人公の逃亡先を話してしまいます。
生き方を考え直す
底辺労働者→ホームレス
逃亡先がバレてしまい、東京に連れ戻され、先輩はひとり全てを引き受ける覚悟をし、中国へ薬の運び屋としていくことになりました。(中国ではバレると死刑)
主人公も、先輩と一緒に中国に行くと訴えましたが、ホストクラブの店長にボコボコにされます。
「あまいこと言ってんじゃねえぞ、てめえよ、金がどんなもんかわかってんのか!知りもしねえでよ、金より大事なもんがあるとでも思ってんのか、世間知らずが甘ったれたこと言いやがって、中国で○○運んで捕まったら死刑だぞ、あいつの覚悟もわかんねえで、ガキがマブダチ気取ってくち突っ込んでんじゃねえよ。」
その後、「そいつはもう終わっている」と河川敷に捨ておかれます。
近くのホームレスに助けられ、一緒にホームレスとして生活をしていくことになります。
「俺はもう終わっているんです」と主人公。
「死んでもないのに、終わるやつはいないよ」
助けてくれたホームレスは、息子を震災でなくしておりました。
拾った雑誌を売る仕事をやっていると、ふと目にした雑誌の中に、かつてのホストクラブ常連さんが、風俗で働いている記事を見つけます。
その風俗店へ行き、心から謝ります。
「俺、謝っても謝りきれないけど、でも、自分が生きているって、みんなのおかげで生きているって伝えたくて、それが謝ることだと思って、俺、今多摩川でホームレスやってます。駅前で雑誌売ってます。自分は終わっているから。名前も何もかも捨てて、虫みたいに生きようって思ったんです。でも、それは逃げてるだけでした。みんな必死で生きているのに、自分だけ逃げようとしていたんです。本当にごめんなさい。俺、少しずつでもお金返しますから、だから、生きていてもいいですか?」
彼女は、
「もう、お金はいい。あれは、あの頃の私が、あの頃のあなたにあげたものだから、だから、今のあたしのために、シャンパンコールやって」
「あのね、あたしもあなたも、まだ終わったわけじゃないから」二人涙を流しながら抱擁します。
主人公は、親探しの旅に出ると助けてくれたホームレスにつげ、夕日の中歩いていきました。
みどころ
顔つきが変わる
何不自由ない大学生から、ホームレスまでの転落人生ですが、その過程で、本当の友達や、大切な人ができ、人間としてとても成長していきます。
ラストの親探しの旅に出発するシーンでは、お金はないが、彼ならなんとかするだろうと思わせる、たくましさすら身につけるようになります。
転落してからここまでたった半年間。
「人生は長さではなくて、どれだけの経験をしてきたか。」
と深く感じさせられた映画でした。
視聴する方法は
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